今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
メールをひと通りチェックし、返信を終えたあと、今日の分の記事をまとめにかかる。

二十分、三十分と時間が過ぎ、気がつけばもうすぐ一時間。遅い。

待ちながらできる仕事はたくさんあるから、たいして苦ではないけれど、普通の女の子なら怒って帰っちゃうレベルじゃないだろうか。

ちょっぴり小腹も空いてきたので、『飲食OK』という張り紙を確認し、バッグの中に入っていた栄養補助クッキーをかじる。

連絡をしようにも、彼の電話番号を知らない。知っているのはパソコン用のメールアドレスのみ。

送ったとしてもチェックする時間もないだろう。あるならとっくに連絡が来ているはずだ。

急患なら、まぁ仕方がない。でも、もし私のことを忘れて懇親会に行っちゃったんだとしたら、このまま待っていても戻ってこない可能性がある。

さすがにお財布を託したまま姿を消したりはしないだろうけれど……しないと思いたい。

大人しく待つこと一時間半。やっとノックの音が響き、帰宅の準備を済ませたスーツ姿の西園寺先生が姿を現した。

「……ごめん。こんなに待たせるつもりはなかったんだ」

さすがに申し訳なさそうな顔をしている。手術後のナーバスな表情は消え失せていた。
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