今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
彼が運転手に行き先を指示すると、五分と経たず目的地に到着した。立派な高層マンションだ。

エントランスをくぐると、大きなロビーがあり、カフェレストランが併設されている。

手前に案内板、奥にコンシェルジュカウンター。カウンターを跨ぐように改札機のようなセキュリティゲートが設置されていて、その奥に高層エレベーターが並んでいる。

「それにしても、よかったんですか? こんな日に私と食事なんて。別の日でもかまいませんよ」

「まるで俺との食事を反故にしたいみたいな言い方だね」

「手術のあとは気分が乗らないっておっしゃってたの、西園寺先生ですよ?」

「君は特別。むしろ、少し高揚しているくらいでちょうどいい」

そう言って私の肩を抱き、挑発的に覗き込む。

「なにしろ、真剣だからね。手術のときと同じくらいに」

不覚にもドキリとしてしまった。強く気高い眼差しに見惚れそうになってしまう。

真剣にと言われて、胸がざわついているのを感じ取る。

「……西園寺先生って、スキンシップ過剰ですよね。いつもそんな感じなんですか」

冷静になれと、自分に言い聞かせるように腕を跳ねのけるが、彼は追及の手を緩めてくれない。
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