今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
エレベーターに乗り込み彼の斜めうしろに立つと、彼は二十五階を押して扉を閉めた。すぐ横の壁にもたれて、あっけらかんと言い放つ。

「ま、下心がないとは言わないけれど」

「やっぱり降ろしてください」

「下心はあるけど、キス以上を求める場合はきちんと同意を取るって約束するから」

ね?となだめると、勝手に私の手をとって二十五階のフロアに降りる。どうやら手を繋ぐことは同意不要だと思っているらしい。

「……本当に、軽い……」

呆れ半分につぶやくと、彼は「ん?なんのこと?」と惚けた振りをして私を自宅の中に招いた。

彼の家は、単身者と思えないほど広かった。とんでもなく大きなリビングに、部屋が四つ。ブラインドの隙間から綺麗な夜景が覗いている。

調度品はどれも高級そう。お医者さんのお給料ってすごいのねと圧倒された。

病院を出る前にあらかじめデリバリーを頼んでおいてくれたらしい、私たちが家に到着してすぐに玄関のチャイムが鳴った。

届けてもらったのは、立派なケースに入った豪勢なお料理。こんなにリッチでオシャレなデリバリーがあるなんて初めて知った。

「創作イタリアンらしいんだけれど、どう? 好みに合いそうかな?」
< 99 / 275 >

この作品をシェア

pagetop