スキキライ*シンドローム
そこで、屋上の扉がゆっくりと開く。
ひょこっと顔を覗かせたのは、栗色の短髪の生徒だった。赤いネクタイをしているから、恐らく三年生だろう。
「あ、奏汰くん! その人たちが例の人たち?」
にっこり、と朗らかに笑うその人はどうしてもこの唯我独尊セレブとは相容れないような、いわゆる癒し系だった。
「はじめまして! 僕は三年の柳瀬 桃弥。奏汰くんから話は聞いてるよ。一緒にたくさんの人を助けようね!」
「「……助ける?」」
柳瀬先輩と言う生徒から飛び出した聞き慣れないワードに、私とセラちゃんは『はて?』と首を傾げる。
「もしかして、何も聞いてないの?」
驚いたような表情の柳瀬先輩に、私はコクコクと頷く。
「俺たちは『同好会を設立するから協力しろ』、としか言われていない」
「何なら、協力するしかない状況にされました」
彼は「またか……」と、頭を抱えた。
「ごめんね? 奏汰くん、説明不足なことが多くて……。でも、根はとってもいい人なんだ! 現に、僕もたくさんお世話になってるし……」
それに、と柳瀬先輩は続ける。
「奏汰くんが設立する同好会は、言えば『人助けをするため』の同好会なんだよ!」
と、嬉しそうに言った。
意外過ぎて、また開いた口が塞がらなかった。
「……桃弥、余計なことを言うな」
「でも、言わないと何を協力するのか分からないよ?」
成瀬先輩は手の甲で顔を隠すけど、その頬は少しだけ赤らんでいた。
「……先輩。意外と、照れ屋なんですね」
「……うっせ」
少しだけ先輩のことが可愛く見えて、しかも根底の優しさが垣間見えた気がして、ほんのちょっぴりだけ見直した。