李世先輩は私のことを知り尽くしている?
目的地に到着し、全員がバスを降りて整列すると、先生はメガホンを通して声を張り上げる。
「いよいよ、今年のオリエンテーリングのルールを発表する。これからみんなが登る山は、『あみだ山』と呼ばれるくらい、様々なルートがある。そこで、地図や各々の知識を元に――と、言いたいところだが、今年は運を頼りに最短ルートを目指し、どのグループが一番早く全員でゴールできるかを競ってもらう!」
「運」という先生らしからぬ言葉に、ざわっとどよめきが起こる。
運なら、どのチームにも勝ち目があるもんね。
「こういう単純なやつが、一番盛り上がるんだよね」
そんな梓ちゃんの言葉通り、早く登りたくてうずうずし始めた子も多い。
タイムアタック制みたいだし、走ってケガするグループとか、いっぱい出てきそうだなあ。
そう思った時、追加のアナウンスがかかった。
「ただし、走るのは禁止だ。山の中には先生方が待機していて、無茶な登り方をしているグループは見つけ次第ペナルティーが与えられる。一部立ち入り禁止の道もあるから、オリエンテーリング係の指示の元、くれぐれもケガのないように!」
「ちぇー」と残念がる声がぽつぽつと響く。
さすが、生徒のことをよくわかってる。
先生たちの方が、一枚上手だったようだ。