李世先輩は私のことを知り尽くしている?
先生の説明が終わると、グループごとに集まって、いよいよオリエンテーリングが開始される。
5分間隔で、2グループ同時にスタートを切っていく。
「おはよう、陽茉ちゃん、葉山ちゃん」
「おはよう、二人とも」
「「おはようございます」」
李世先輩と遠見先輩が私たちのことを見つけてくれた。
――白のロングTシャツに、紺色のジーパン。
シンプルな服装ゆえに、李世先輩のスタイルの良さが際立っている。
私服姿が貴重ということもあって、射貫かんばかりの女子生徒の視線が集まっていた。
さすが、李世先輩だ。
「今日もよろしく頼む。もう一人の一年は……」
遠見先輩がキョロキョロと辺りを見回す。
古瀬くんの姿が見当たらないのだ。
「古瀬くーん?」
梓ちゃんが声をあげると、しばらくして、人混みの中から姿を現した。
オリエンテーリング係が持つことになっている、救急セットの入った重そうなリュックを背負っている。
「おはよう。今日もよろしくね」
「はい、こちらこそ」
李世先輩の言葉に、古瀬くんはペコリと軽く頭を下げる。
それっきり、ぼーっとどこか一点を見つめ、一言も発しなくなる。
……やっぱり、どこか不思議だなあ。