李世先輩は私のことを知り尽くしている?
「古瀬、どうかしたのか?」
遠見先輩の問いに、古瀬くんは静かに答える。
「今、あのグループが歩いていった道は、禁止されてるルートなんです。近道できるけど上級者向けのルートで、加えてこの時期は雨で足場が滑りやすくなっているからって」
古瀬くんの言う通り、左側の道には、「この先、転落事故注意」と真っ赤な文字で書かれた板が立っていた。
「つまり、あの班はズルをしたってこと?」
「だろうね」
梓ちゃんの言葉に、古瀬くんはうなずく。
そうか、そういうことだったんだ。
さっきの、作戦がどうこうって話の意味がようやく分かった。
つぼみちゃんは渋っていたけど、私と同じ道を進みたくないがために、了承したんだ。
「どうします?このままスルーしますか?それとも、先生にチクります?」
「うーーん、あそこの班の二年、悪いウワサも多いしあんまり関わりたくないけど……誰かがケガしてからじゃ遅いからね。次、先生に会ったら報告しようか」
誰かが、ケガ……。
なんだか、胸騒ぎがする。
どうしてだろう…………あ。