李世先輩は私のことを知り尽くしている?


「陽茉ちゃんのバカ。命知らず。アホ」



「……バカって、つぼみちゃんにも言われました」


「その子も俺も、本気で言ってるから」




私が少しだけ笑って言うと、むっとした声が返ってきた。


続けて、先輩はぽつりぽつりとつぶやく。




「最初の叫び声に続いて、陽茉ちゃんの悲鳴まで聞こえてきた時……心臓が止まりかけたよ」


「し、心配をおかけして、すみません」



「とーぶん許さないから。……でも、陽茉ちゃんが無事で、本当に良かった」





李世先輩は、いっそう強く私を抱きしめる。



……李世先輩が、こんなにも私のことを心配してくれていたなんて、思わなかった。



先輩は私のことを、大事に思ってくれているって……少しだけ、自信をもってもいいのかな?




「それで、命を張った介あって、あの子と仲直りできた?」



「はい!李世先輩が、『きっと仲直りできる』って、私の背中を押してくださったおかげです!」


「そっか。それはよかった」




先輩の両腕が、ゆっくりと私から離れる。


先輩の顔を見上げると、一転して、穏やかな表情を浮かべていた。


……ずっと気になっていたこと、聞いてみようかな。
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