李世先輩は私のことを知り尽くしている?
「……あの、先輩。一つ、聞きたいことがあるんですけど……」
「なあに?」
「李世先輩って、私のこと……何でも知っているみたいですよね」
「……どうしてそう思うの?」
少し間があったけど、李世先輩の声音は柔らかいままだ。
「そ、その……私が食いしん坊だってこと、すぐに気づいていたし。口下手な私がうまく伝えられていないことも、まるで心の中を見透かしたみたいに、知っているから……」
「……そんな俺のことが、怖い?」
さっきとは違って、先輩の声は少しだけ強張っていた。
まるで、私の返事を待つ李世先輩の方が、怖がっているように感じられる。
……確かに、言った覚えのないことを相手に知られていたら、普通は恐ろしく感じるだろう。
でも……。
「……いえ。多少は驚いちゃいますけど、私は……うれしい方が強いかなあって。私、ずっとうまく話せない自分がコンプレックスなんです。でも、先輩と話しているときは、それを全然感じなくて、心から会話を楽しめていると思うんです」
「そっか。
……ありがとね、陽茉ちゃん」
ふいにお礼を言われて、改めて李世先輩の顔を見上げる。
日に照らされる先輩は、どこか晴れやかだ。