李世先輩は私のことを知り尽くしている?
でも、陽茉ちゃんの言葉に従って、このまま俺たちだけで進むわけにはいかない。
そもそも、ここからも道が分かれていくんだから、進んだら陽茉ちゃんと合流することはできないだろう。
そのことに気づかないくらいい、陽茉ちゃんは焦っているということだ。
「青矢は急いで先生を呼んできてくれ。葉山ちゃんと古瀬くんはここにいて、これ以上誰かがここを通らないよう見張っておいてほしい」
「ああ、わかった」
「はい」
「わかりました。菊里先輩はどうするんですか?」
「俺は、万が一なにかあったときに駆けつけられるよう、少しこの道を進むよ」
「気を付けてくださいね。……陽茉のこと、お願いします」
「ああ、もちろん」
「ミイラ取りがミイラにならないようにな」
「分かってるって!」
青矢に念を押された俺は、ゆっくりと道を進んでいく。
何もトラブルは起きず、陽茉ちゃんとあの班が戻ってきますように――
そんな淡い期待は、またもや砕け散る。
「きゃあああっ!!!!」
思わず、身に力が入った。
甲高く、つんざくような悲鳴が山中に響いたのだ。
――女子の声。
多分、陽茉ちゃんではないから……つぼみちゃんか、もう一人いた別の女子だろう。
悲鳴が遠ざかっていくように聞こえたから、崖みたいに側面との高低差があるこの足場から滑り落ちてしまったのかもしれない。