李世先輩は私のことを知り尽くしている?
しばらくすると、先生の車が駐車場に入ってきて、ところどころに包帯やばんそうこうが貼られた陽茉ちゃんが降りてきた。


本当にひどいケガが無かったのか、全身をくまなく確認していると、おずおずと陽茉ちゃんが口を開いた。




「あの、先輩。色々とありがとうございました。迷惑をかけてしまって……」「陽茉ちゃん」





俺は、謝罪の言葉がほしかったわけじゃない。



「あ、あの、李世、先輩……?」




陽茉ちゃんとの距離を詰めていくと、困惑しながらも、避けることはなかった。


陽茉ちゃんの澄んだ瞳を近くで見られることに、心底安心する。



もし、落ちた時に当たり所が悪くて大けがを負っていたら……二度とまぶたが持ち上がることが無くなっていたとしたら――





俺は、耐えられない。



気づけば、小さな陽茉ちゃんの体を引き寄せて、俺の腕の中におさめていた。





「陽茉ちゃんのバカ。命知らず。アホ」



「……バカって、つぼみちゃんにも言われました」





本当にバカだよ、陽茉ちゃんは。


俺はあんなにも心配していたのに、当の陽茉ちゃんはケロッとしているから、つい本音をもらしてしまう。




「最初の叫び声に続いて、陽茉ちゃんの悲鳴まで聞こえてきた時……心臓が止まりかけたよ」


「し、心配をおかけして、すみません」



「とーぶん許さないから。……でも、陽茉ちゃんが無事で、本当に良かった」





陽茉ちゃんを抱きしめる腕に、つい力がこもる。
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