李世先輩は私のことを知り尽くしている?
「それで、命を張った介あって、あの子と仲直りできた?」
「はい!李世先輩が、『きっと仲直りできる』って、私の背中を押してくださったおかげです!」
「そっか。それはよかった」
……そろそろ、離してあげた方がいいかな。苦しいかもしれないし。
陽茉ちゃんの体を手放すと、陽茉ちゃんは指をいじりながら、そっと口を開く。
「……あの、先輩。一つ、聞きたいことがあるんですけど……」
「なあに?」
「李世先輩って、私のこと……何でも知っているみたいですよね」
「……どうしてそう思うの?」
できる限り冷静に、動じずに、言葉を発する。
古瀬くんに続いて、陽茉ちゃんにも不思議に思われてしまったらしい。
陽茉ちゃんに対してはけっこう力を使ってしまっているから、当然といえば当然だけど。
「そ、その……私が食いしん坊だってこと、すぐに気づいていたし。口下手な私がうまく伝えられていないことも、まるで心の中を見透かしたみたいに、知っているから……」
「……そんな俺のことが、怖い?」
自分でも、わずかに声が震えたのが分かった。
怖がっているのは、俺の方じゃないか。
人の心が読める俺は普通じゃないって、畏怖される存在になっても何らおかしくないって、自分でもよく理解しているから。
でも……陽茉ちゃんは、首を横にふった。
「……いえ。多少は驚いちゃいますけど、私は……うれしい方が強いかなあって。私、ずっとうまく話せない自分がコンプレックスなんです。でも、先輩と話しているときは、それを全然感じなくて、心から会話を楽しめていると思うんです」
「そっか」
明らかに、ほっとしている自分がいる。
「……ありがとね、陽茉ちゃん」
そんな風に、プラスに捉えてくれるなんて。
俺と過ごす時間を、楽しいと言ってくれて。