李世先輩は私のことを知り尽くしている?
不思議に思っていると、女子三人組の会話を聞いていたらしい別の男子生徒が、にやにやしながら口をはさんだ。
「ウワサじゃ、アイツの彼女が相当嫉妬深いって話だぜ」
「は⁉どういうこと⁉」
「李世に彼女がいたなんて、初耳なんだけど⁉」
声を荒げる女子生徒。
私の胸も、共鳴するように、ドクドクと脈打っている。
「李世がすげー美人と一緒に歩いてるのを見たやつがいるんだよ。多分、他校の生徒じゃないかって」
「はーっ、マジィ⁉通りでガードが固いワケかあ」
「なんか、一年女子と付き合ってるってウワサもあったけど、あれはガセだったん?」
「ナイナイ!あたし、李世がその一年と話してるところ見たことあるけど、ただのチビだったし!」
私は思わず身を縮めた。
女子グループはそのまま会話に花を咲かせながら、私の側を素通りしていく。
全身の力が抜けた。
一年女子って……多分、私のことだよね。
私が知らない先輩に、私のことを知られているなんて。
李世先輩くらい有名な人と何度も話していれば、当然なのかな。
でも、人目があんまり得意じゃない私は、急に怖くなってしまった。
それに、李世先輩……彼女さん、いたんだ。
私も、初耳だったな。
「ん、お前は蓮井か」
突然後ろから話しかけられて、肩を震わせてしまう。
でも、すぐに声の主が誰か分かった。