李世先輩は私のことを知り尽くしている?
「遠見先輩……」
「二年の教室の前なんかにいて、どうしたんだ?」
首を傾げる遠見先輩。
ビックリしたけど、話しかけてもらえてちょうどいいタイミングだったかも。
遠見先輩に、渡してもらおう。
「え、えっと、李世先輩に自然教室の時にとった写真を渡しに来たんですけど、勉強してるみたいなので、後で渡してくれませんか?」
「蓮井が直接渡さなくていいのか?」
「……はい」
「分かった」
遠見先輩は私から写真を受け取ると、チラリと教室へ目を向けた。
「意外だったんじゃないか?」
「え?」
「李世がクラスの連中とつるまず、黙々と勉強しているのが」
「あ……はい。ちょっと、意外でした。李世先輩は、人気者だから」
素直に答えると、遠見先輩はフッと息を吐く。
「あいつとは小学生の頃からの腐れ縁だが、いつも『ああ』だよ。一目置かれるものの、クラスメイトとはつかず離れずの適度な距離を保つ。李世が心を許しているのは、自分でいうのもなんだが、僕くらいだろう」
遠見先輩のどこか寂しそうな言葉で、私は気づく。
李世先輩は誰とでも仲良くしている印象があるけど、特定の誰かと言われれば、遠見先輩しか思い当たらないことに。
「まあ、今はもう一人いるみたいだがな」
遠見先輩はそう言って、じっと私を見つめる。
な、なんでそんなに視線を送ってくるんだろう……?
答えてほしいってことかな……。
そう判断した私は、おずおずと切り出す。
「それって……彼女さんですか?」
「え、彼女?お前たち、もう付き合っているのか?」
「へ?」
遠見先輩と話がかみ合わず、お互いにハテナマークが浮かんでいると、予鈴が鳴った。
いけない、次は移動教室だった!
「そ、それじゃあ、よろしくお願いします」
「……ああ、わかった」
しきりに首を傾げている遠見先輩を背に、私は急いで自分の教室へと戻った。