李世先輩は私のことを知り尽くしている?
どうにか五時間目の移動教室にも間に合って、無事に一日を終えることができた。


ふと後ろを振り向くと、古瀬くんと目が合った……気がした。


目元が隠れているから定かではないけど、最近、妙に見られている気がするんだよなあ。


私、ホコリがついてるとか、どこか変なところ、ないよね?


帰り支度をしながら自分の髪型や制服を確認していると、ポンと肩をたたかれた。




「蓮井さん」





話しかけてきたのは、古瀬くんとは違う、クラスメイトの男の子だった。



「えっと……北条くん?」





パーマのかかった茶髪に、少しつり目の大きな瞳。


確か、バスケ部の次期エースだって名高い、うちのクラスのモテ男子だ。




「ちょっと、話したいことがあって。この後、少し時間もらっていいかな?」


「え……い、いいけど……」

「ありがとう。じゃあ、裏庭で待ってるね」





笑顔を浮かべると、北条くんは友達に挨拶して、教室を出て行ってしまった。




「陽茉―、帰ろっ―!」




私が呆然としていると、すっかり支度を済ませた梓ちゃんがやって来た。



「ん、どうかしたの?」


「な、なんか……北条くんが、私に用があるって……」

「北条って、あのバスケ部の?陽茉、なんか関わりあったっけ?」

「いや、全く……」




そうなのだ。


教室ではもちろん、委員会や部活なんかでも、全く接点はない。


なのに、急に話があるなんて……。




「私が代わりに行ってこようか?」




私の困惑や不安を感じとったんだろう梓ちゃんは、そう提案してくれた。



少し迷ったけど、私は首を横に振る。




「ありがとう。でも、とりあえず話を聞いてみるよ」



「了解!ひどいこと言われたりしたら、絶対報告してよ!」

「うん!」



ぽきぽきと指を鳴らす梓ちゃん。


梓ちゃん、クール系美人さんなのに、けっこう男勝りなんだよね。


私は、そこが好きだけど。
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