李世先輩は私のことを知り尽くしている?
梓ちゃんと別れた私は、北条くんが待っているという裏庭を目指す。
本当に、何の用なんだろう?
ひょっとして、梓ちゃんとの仲を取り持ってほしい、とか?
それならあり得る。梓ちゃんは、クラスでも一二を争う美人さんだから。
どうしようかな、梓ちゃん、北条くんに、全く気はなさそうだけど……。
そんなことを考えながら裏庭に着くと、北条くんは私の方へ駆けよってくる。
「蓮井さん、来てくれてありがとう!」
「ううん。そ、それで、話って……?」
そう尋ねた瞬間、北条くんはバッと頭を下げて右手を突きだす。
「蓮井さんのことが好きです!付き合ってください!」
え?間違えてない?
「……梓ちゃんの苗字、蓮井じゃなくて、葉山だよ?」
「間違ってない。オレは、蓮井陽茉さんのことが好きなんだ」
「……えっ、私?」
思わず自分を指さすと、北条くんは大きくしっかりとうなずいた。
ほ、北条くんが、私のことを、好き……?スキ……?
突然すぎて、うれしいとか悲しいとか、そういう感情的なものは一切湧いてこなくて、単純な疑問だけが浮き上がってくる。
「あの……私と北条くんって、今まで関わったこと、ほとんどないよね……?」
「そうだね。でもオレ、自然教室のときの蓮井さんを見て、一目ぼれしたんだ」
し、自然教室……?確かに、色々あったけど……。
「ぐ、具体的には……?」
「二日目のオリエンテーリング。実は、オレの班も禁止されてるルートを通ってて、後から来た班の一部始終を見てたんだ。蓮井さんが滑落した友達のために、木の根を伝って助けに行ったところ」
まさか、あれを見られていたなんて……。
「正直、蓮井さんのこと今までは気にもしてなかったけど、自然教室以降、頭から離れなくて。それでオレ、蓮井さんのことが好きになったんだって、ようやく気づいたんだ」
「そ、そうだったんだ……」
こんな風に、自分のことを好きになった理由を聞かされるのは初めてで、どう反応すればいいのか困ってしまう。
「だから、オレと付き合ってくれませんか?」
……私はすぐに答えられなかった。