李世先輩は私のことを知り尽くしている?
「お、おかしいって、どんな風に?」
「なんだか戸惑ったような表情をしていたんだ。あと――お前たちって、付き合ってないんだよな?」
「……うん」
渋々うなずくと、青矢はあごのあたりに右手を添える。
「そうだよな。蓮井に李世についての話題を少し振ったら、恐る恐るといった様子で、『彼女さんですか?』と聞かれたんだよ。李世に彼女はいないから、てっきり付き合い始めたのかと思ったんだ」
彼女さんですか?……か。
人の心が読めるという厄介な力を持っている俺は、今まで彼女を作ったことなんてない。
だから、思い当たる人物は一人もいないわけで。
「きっと、なにか誤解してるんだろうね。葉山ちゃんにでも話を聞いて、少し様子を伺ってみるよ。ありがとう、青矢」
「ああ」