李世先輩は私のことを知り尽くしている?
葉山ちゃんと話す機会を得るために、俺は次の日、1-Aの教室へ向かった。
すると、目ざとく俺を見つけた「あいつ」が、教室から出てきてすぐに声をかけてきた。
「そろそろ菊里先輩が来る頃だと思ってました」
「……どういうこと?」
相変わらず前髪で目元が隠れ切っているものの、口元はにやりと笑っていた。
――自然教室二日目に突然、俺と陽茉ちゃんの関係に興味を持ったと宣言してきた謎の一年、古瀬くんだ。
「蓮井さんについて、気になっていることがあるんですよね?」
「なんでそれを……。ひょっとして、陽茉ちゃんの言う『俺の彼女』が誰のことなのか、分かるのか⁉」
「それは初耳ですね。ぜひ、お聞かせいただいても?」
……しまった、失言だった。
目は全く見えないのに、らんらんと輝いているだろうことが分かる。
「……まさか、ハッタリだったなのか?」
「いえいえ、オレが持っているのとは違う情報だっただけです」
「俺が来るのを待ってくれていたくらいだ、教えてくれるんだよね?」
「ええ、『俺の彼女』の件を教えてくださるのなら」
正直、腹の中が見えない古瀬くんに、余計なことは言いたくなかったけど。
別の情報というのが気になって仕方なかった俺は、仕方なく事の経緯を教えた。
「これでいいだろ?」
「はい、ありがとうございます。それじゃあ、対価としてオレもお教えします。――菊里先輩、気をしっかり持ってくださいね?」
……なんだその、重病を宣告するときみたいな、怖い言い方。
「蓮井さん、告白されたみたいなんです。ウチのクラス一のモテ男子に」
「は、はあああ⁉」
……お、落ち着け。
古瀬くんの手のひらで踊らされるものか。
「へ、へえ。それで、ひ、陽茉ちゃんは――」「昨日、一緒に下校したみたいですよ」
開いた口がふさがらなかった。
「素敵な反応をありがとうございます。ああでも、告白を受け入れたのかはわかりませんけどね。まあ、そのまま一緒に帰るってことは……ねえ?」
……完全に煽られている。