李世先輩は私のことを知り尽くしている?
顔が引きつっている自覚はありつつも、無理やり笑顔を浮かべる。
「貴重な情報を……どうもありがとう……」
「いえいえ。僕たち、Win-Winの案外良い関係を築けそうですね?」
「いや、遠慮しておくよ……」
苦々しくつぶやくと、古瀬くんは満足げに「それじゃあ、また」と軽く手を振って、教室へ戻った。
古瀬くんって、最初は無気力なイメージがあったけど、そうじゃなかった。
端的に言えば、偏りが激しい性格なんだ。
無関心な出来事に対しては素っ気無いけど、興味の持てる出来事には、とことん首を突っ込む。
タチが悪いったらありゃしない。
それでも、彼のおかげでとんでもない情報を手に入れられたのは事実で、俺は当分複雑な気分に浸かるしかなかった。
……陽茉ちゃんは本当に、クラスの男子と付き合い始めたんだろうか。
たとえそれが本当でも、陽茉ちゃんの決めたことならば、俺に口出しする権利はない。
ないん、だけど……。
――4月の頃は、俺が陽茉ちゃんを振り回している自覚があった。
だけど気が付けば、俺ばかりが振り回されているような。
きっとそれくらい、俺の方が彼女にベタ惚れしているんだろう。
なのに……はあ。
俺、失恋したのかなあ……。