李世先輩は私のことを知り尽くしている?
一触即発
「ええええええええ、告られた⁉」
翌日、江真くんとのやり取りを、梓ちゃんに報告すると。
危うくイスごとひっくり返りそうなくらい、驚いた。
「ま、まさか、オッケーしたの⁉」
「それが、私がだんまりでいたら、ひとまず、一週間のお試しで付き合ってほしいって言われて……」
「ははあ、そのまま流されちゃったってワケね」
さすが梓ちゃん、私のことをよく分かってる。
「北条くんが陽茉に告白、ねえ。陽茉のかわいさに、世界が気づき始めたってことかしら」
「せ、世界って……」
梓ちゃんったら、真顔で変なコト言うんだから……。
「でも、このことを菊里先輩が知ったら、ショック死しちゃうんじゃない?あんなに頑張ってたのに、あっさり横取りされちゃって」
笑いながら話す梓ちゃんに、私は静かに首を横に振る。
「それはないよ。だって、李世先輩には――」「おはよう、陽茉」
上から男らしい低い声が降ってきて、私の言葉を遮る。
見上げると、江真くんが私に微笑みかけていた。
「お、おはよう、江真くん」
「明日、楽しみにしてるから」
「うん」
どうにかうなずくと、江真くんは満足したようでその場を離れていった。
それと同時に、クラスメイトの好奇心に満ちた視線も、まばらになっていく。
これから、こういうことが増えるんだろうなあって思うと、憂うつだ。