李世先輩は私のことを知り尽くしている?
ていうか、やっぱり、口に出してないのに会話が成立してる⁉
ど、どうなってるの……⁉
「あ、あの、先輩……」
「俺の名前は『先輩』じゃないよ。菊里李世」
どうして私の思っていることが分かるんですか?って聞こうとしたけど、さらりと会話の主導権をとられてしまう。
「き、菊里先輩」
「そう。あっ、でも、菊里って苗字、二年生にもう一人いるんだ。どっちのことか分からないし、困ったなあ」
そう言う先輩はニヤニヤしていて、ちっとも困っているようには見えない。
私だって、困ることはないだろう。
同級生ならともかく、もう一人の「菊里先輩」と関わる機会なんて、無いだろうから。
先輩が求めているのは、そんな分かり切った答えじゃない。
きっと……こういうことだ。
「じゃあ……李世先輩」
これで合っていたらしく、先輩は満足そうにうなずく。