李世先輩は私のことを知り尽くしている?
「陽茉―、もう行ける?」
「あ、うん!」
翌日の放課後。
江真くんが私の席にやって来て、にこやかに声をかけてくる。
「じゃあ梓ちゃん、また明日っ」
「うん、ばいばーい!」
梓ちゃんに挨拶して、私はそろそろと江真くんと一緒に教室を出た。
李世先輩に負けず劣らず、江真くんは女子生徒の視線を集める。
時々、明らかに私をにらんでくる子もいるから、身がすくんでしまう。
「ったく、女の嫉妬ってうざいよな。気にするんなよ、陽茉」
「う、うん……」
江真くんもそれに気づいて、なぐさめてくれたみたい。
でも、そう言われても、気にしちゃうよ……。
「それより、これから行くところなんだけど、去年オープンしたショッピングモールでいい?ちょうど、最寄り駅が陽茉の通学ルートに入ってるんだよ」
「うん、そこにしよう」
「おっけ。オレもまだ一回しか行ったことないんだけど、めちゃくちゃ広くてさ――」
江真くんと話しながら駅まで歩いて、電車に乗る。
私の最寄り駅より数駅手前で降りて改札を出ると、江真くんは慣れた様子で進んでいく。
「ほら、あそこあそこ!」
江真くんが指さしたのは、レンガ調の外装がなされた、大きな建物。
「こんな大きなお店があったんだ……」
「そうそう、意外と知らない人も多くて、穴場なんだよ!」
いわゆる駅チカな立地で、あっという間にたどり着いた。