李世先輩は私のことを知り尽くしている?

中に入ると、私たちみたいな高校生がたくさんいて賑わっている。


高校生は高校生でも……カップルのお客さんが多いような……。


その理由は、ショッピングモール内を歩いていて、すぐに分かった。


あちらこちらの店で、『カップル割』という文字が躍っているのだ。




「陽茉、なんか食べたいものある?小食そうだし、アイスとか?」

「え、えーと……」




正直、お昼からそこそこ時間が経ってるし、がっつりいっておきたいところ。


でも、おにぎりとかラーメンが食べたいって言ったら、100パーセント引かれるよね……。




「う、うん、アイスが食べたいな」



そう返事すると、江真くんはうれしそうに笑う。



「オレも今、アイスの気分なんだ。あそこの店で食べようぜ」




そう言って、江真くんは私の前に左手を差し出す。




「え、えーと……?」



「こういうことだって」




江真くんは私の右手をつかんで、指先をからめる。



いわゆる、「恋人つなぎ」ってやつだ。



こんなことをしたのは初めてで、触れ合う指先に、体中の熱が移っていく気がした。




「カップル割で200円も安くなるから。行こ」




江真くんが私の方を向きながら、一歩踏み出すと。



「わっ」

「いたっ」




前から来ていた人と、ぶつかってしまったみたいだ。




「すみません」

「いえ、こちらこそ――」





……え。



無意識に江真くんとぶつかった相手を見上げた私は、固まってしまう。



相手も、目線を江真くんから私へと下ろしたとき、明らかに顔色が変わった。


私はなぜか、江真くんとつないだ手をほどこうとする。


でも、私よりひとまわりふたまわりも大きい手のひらでギュッと包まれていて、それが叶うことはなかった。




「あれっ、菊里先輩、ですよね?」

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