李世先輩は私のことを知り尽くしている?
「わ……分からない、です」
絞り出すようにそう答えると、李世先輩は目を細める。
「分からないってなに?どういうこと?じゃあ、なんで付き合ってるの?」
私が口を開く前に、江真くんが私の前に出た。
「ちょっと、陽茉が困ってるじゃないですか。やめてください」
「悪いけど、君は少し黙っておいてくれる?」
李世先輩は上背がある上に冷たい視線を注いでいるのに、江真くんは全く物怖じする様子がない。
「……そういえば、菊里先輩が一年とやたら仲良くしてるって話を耳にしたことがあるけど。あれって、陽茉のことなんですか?」
「……だったら、なにかな?」
「いえ、それなら納得がいくなーって。菊里先輩、男の嫉妬も見苦しいですよ」
勝ち誇ったように、フッと軽く笑みをもらす江真くん。
その瞬間なぜか、李世先輩の表情に、わずかな罪悪感が宿った。
私が不思議に思ったのもつかの間、李世先輩は無言で江真くんを見すえる。
江真くんも視線を逸らさず、笑みをたたえたまま、李世先輩を見つめ返した。
「……っ!」
すると、李世先輩はたちまち顔をゆがめて――一気に距離を詰めると、私と江真くんのつないだ手を引きはがした。
「ちょっと、なにするんですか!」
「こっちのセリフだ!お前なんかに……陽茉ちゃんを傷つけようとしているやつに、この子は渡せない!」
「は、はあ?先輩、急にどうしちゃったんですか?」
呆気にとられる江真くんを無視して、李世先輩は私の腕を力任せにつかむ。
「い、痛いっ……」
「陽茉ちゃん、行こう。こいつといちゃダメだ」
そう言って、無理やり私を引っ張っていこうとする。
指が食いこむくらい強く握られて、思わず顔をしかめてしまう。
「菊里先輩、陽茉が痛がってますけど。傷つけてるのは、そっちじゃないですか?」
「……っ! いいから、陽茉ちゃんから手を離すんだ!」
再び立ちふさがった江真くんの言葉に、李世先輩は一瞬動揺しながらも、一歩も引かない。
そんな時だった。