李世先輩は私のことを知り尽くしている?
「それにしても、陽茉ってモテモテなんだな。あの菊里先輩が、オレに難癖つけてまで陽茉を自分のものにしようとするなんて。あんな美人な彼女を連れてまでさ」
「難癖……」
江真くんの言葉が、心のどこかにちくりと刺さる。
私はそっと顔を上げて、ご機嫌な江真くんの顔を見つめて言う。
「ねえ、江真くん。李世先輩が江真くんに向けて言っていた言葉は、確かにずいぶん乱暴だったけど……心当たりは本当にないの?」
「ええ?やだなあ、陽茉はあんなのを信じてるのか?」
「そ、それは……」
質問を質問で返されて、私は言葉に詰まる。
「菊里先輩、熱くなって、ついあることないこと言っちゃったんだと思うよ。よくあることさ」
江真くんは抹茶ミルクを飲み干して、近くのごみ箱に放りこむ。
「そ……う、だよね」
だって、こんなに優しくて気遣いのできる江真くんが、私を傷つけるだなんて、思えないもん。
私は自分を納得させるようにつぶやくと、まだ半分以上残っているミルクティーを、急いですすった。