李世先輩は私のことを知り尽くしている?
「……こいつは、バスケ部のお友達と悪趣味なゲームをしていたんだ。――陽茉ちゃんに告って、落とせるかどうかっていうね」
「そ、そんな……」
私にとって、否定したくなるような、信じがたい内容だった。
……でも、それと同時に、思い当たる出来事が頭の中に浮かび上がってきた。
江真くんのことで私に詰め寄ってきた女子生徒たちは、後からやってきた先輩になにやら耳打ちされると、ニヤニヤしながら素直に私を開放してくれた。
きっとあれは、先輩はこのゲームのことを知っていて、女子生徒に教えてあげていたんだ。
ついさっきまで、私と江真くんのやり取りをのぞき見ていたらしい生徒も、ゲームの結果を知るために集まっていたんだろう。
そしてなにより、江真くんが無理をしてでも私と一緒にいた理由――。
それは、私のことが好きでもなんでもなく、ただゲームのためだったから。
李世先輩から真実を聞いた直後、私は頭がズキズキと痛むくらいのひどいショックを受けた。
腹の奥底から、江真くんに対する、どろりとした感情がふつふつと湧き上がる。
――その一方で、今まで感じていた違和感が一つずつ腑に落ちるたび、思考がクリアになっていく。
……江真くんを恨んだって、なんにもならないよね。
私は息をゆっくりと吸って、心を落ち着かせる。
そして最後には、醜い言動をみせることなく、顔を上げることができた。