李世先輩は私のことを知り尽くしている?
「わ……分からない、です」
待ち時間に見合わない曖昧な答えに、思わず語気を強めてしまう。
「分からないってなに?どういうこと?じゃあ、なんで付き合ってるの?」
「ちょっと、陽茉が困ってるじゃないですか。やめてください」
陽茉ちゃんに詰め寄ろうとすると、その間に男子がするりと割って入ってきた。
俺の方が年上だし背も高いのに、全く動じていないようだ。
うち学校のバスケ部、ガラの悪いヤツも少なくないから、慣れているのかもしれない。
「……そういえば、菊里先輩が一年女子とやたら仲良くしてるって話を耳にしたことがあるけど。あれって、陽茉のことなんですか?」
「……だったら、なにかな?」
「いえ、それなら納得がいくなーって。菊里先輩、男の嫉妬も見苦しいですよ」
……一言で言えば、頭に来た。
人がほしがっていたものを自分のものにできて喜ぶ、幼稚園児みたいな笑みに。
それと同時に、疑問に思った。
こんなやつに、陽茉ちゃんの隣を明け渡していいものだろうかと。
……私利私欲のために、俺の力を無暗に使うことには抵抗がある。
でも、ここでこいつの本性を見極めておかなければ、後悔する気がする。
覚悟を決め、俺はこのへらりと笑っている男の目を真っすぐと見つめる。
するとこの男は俺の負け惜しみだとでも思ったのか、笑みをたたえたまま、俺のことを見つめ返した。
【自然教室のときに目についたからターゲットにしたけど、大当たりだったな。扱いやすい性格だし、まさかあの菊里李世のお気に入りだったなんて。気分がいいし、ますます『ゲーム』が盛り上がるだろうな】
その汚い心の声に、自分の顔が引きつるのはハッキリと分かった。