李世先輩は私のことを知り尽くしている?

古瀬くんのタレコミ通り、陽茉ちゃんと北条くんは二人きりで教室に残って話を始めたようだ。


そして教室の周りには、ニヤニヤと下卑た笑みを浮かべながら二人の様子を観察する生徒が数人。


『ゲーム』の結果を見届けにやって来たのだろう。


もちろん、あんなやつらの好きにさせるわけにはいかない。



……陽茉ちゃんは、なんて返事をするつもりなんだろう。


心臓の音を抑えながら、遠目で教室の中の様子を伺っていると、やがて北条くんが声を荒げだす。


詳しい内容までは聞こえないけど……陽茉ちゃんは、告白を受け入れなかったのだろうか。



そんな風に勘繰っていると、ますます激高した北条くんが、拳を振り上げる。


――あいつ、肉体的にも陽茉ちゃんを傷つけようっていうのか‼




「やめろ‼‼」




慌てて教室へと身を乗り出して叫ぶと、北条くんの腕が止まる。


ふとこちらを見た陽茉ちゃんと、目が合った。




【李世先輩が来てくれた、うれしい……。やっぱり、信じてよかった!】




ふと聞こえてしまったその声がうれしくて、俺は泣いてしまいそうだった。


でも今は、それどころじゃない。



さて、ここから先の話は、余計なやつらに聞かれたくないな。




「全員、顔は覚えたからな」




廊下で聞き耳を立てていたやつらにそう声をかけると、全員顔を真っ青にして去っていった。


どうやら俺は今、相当恐ろしい顔をしているらしい。
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