李世先輩は私のことを知り尽くしている?


どっちを告げても、陽茉ちゃんはものすごく驚いていた。


ついでに連絡先を渡すことにも成功して、俺はほっとする。



こうやって、陽茉ちゃんに俺のこと、一つ一つ知ってもらえたらいいな。


……いつかは、俺の力のことも。


そう思った折だった。




「——私、李世先輩のこと、もっと知りたいです。李世先輩が、私のことを知ってくれているように」





まるで、俺が陽茉ちゃんに心を読まれたみたいだった。


恥ずかしがりやな陽茉ちゃんが、こんなにストレートに伝えてくれるなんて。


相当、勇気を振り絞ったに違いない。


俺も、それに応えなければ。




「わかった」





陽茉ちゃんならきっと大丈夫だ。だから、打ち明けよう。



……そう思っているのに、俺の口は固くなに動こうとしない。



幼少期の思い出が、フラッシュバックする。


異質な俺を恐れ、化け物を見るような目を向ける、ついさっきまで友達だった奴らの顔。


じっとりとした汗が、額に浮かぶ。





「……ごめん、陽茉ちゃん。もう少しだけ、俺に時間をくれる?」





陽茉ちゃんが一歩を踏み出してくれたと言うのに、俺にその覚悟ができていなかっただなんて。


情けないのにも、ほどがある。



俺がついうつむくと、陽茉ちゃんは「わかりました」と答え、それ以上なにも追及しなかった。




……ごめん、陽茉ちゃん。



陽茉ちゃんのことを特別に想っているからこそ、俺はすごく怖いんだ。


また前と同じ結果になったら。


俺から離れて行ってしまったら……って。



俺は自分の想像以上に、弱い男だ。
< 179 / 201 >

この作品をシェア

pagetop