李世先輩は私のことを知り尽くしている?
どっちを告げても、陽茉ちゃんはものすごく驚いていた。
ついでに連絡先を渡すことにも成功して、俺はほっとする。
こうやって、陽茉ちゃんに俺のこと、一つ一つ知ってもらえたらいいな。
……いつかは、俺の力のことも。
そう思った折だった。
「——私、李世先輩のこと、もっと知りたいです。李世先輩が、私のことを知ってくれているように」
まるで、俺が陽茉ちゃんに心を読まれたみたいだった。
恥ずかしがりやな陽茉ちゃんが、こんなにストレートに伝えてくれるなんて。
相当、勇気を振り絞ったに違いない。
俺も、それに応えなければ。
「わかった」
陽茉ちゃんならきっと大丈夫だ。だから、打ち明けよう。
……そう思っているのに、俺の口は固くなに動こうとしない。
幼少期の思い出が、フラッシュバックする。
異質な俺を恐れ、化け物を見るような目を向ける、ついさっきまで友達だった奴らの顔。
じっとりとした汗が、額に浮かぶ。
「……ごめん、陽茉ちゃん。もう少しだけ、俺に時間をくれる?」
陽茉ちゃんが一歩を踏み出してくれたと言うのに、俺にその覚悟ができていなかっただなんて。
情けないのにも、ほどがある。
俺がついうつむくと、陽茉ちゃんは「わかりました」と答え、それ以上なにも追及しなかった。
……ごめん、陽茉ちゃん。
陽茉ちゃんのことを特別に想っているからこそ、俺はすごく怖いんだ。
また前と同じ結果になったら。
俺から離れて行ってしまったら……って。
俺は自分の想像以上に、弱い男だ。