李世先輩は私のことを知り尽くしている?


「な、なんとなく、そう感じるだけだけどね」

「そうですか。ささいなことでもいいので、菊里先輩と一緒にいて、気になることとかありませんか?」


「うーん……江真くんの言葉を借りて言うなら、『洞察力』とか?」

「と、いうと?」


「私、この通りすごく口下手なんだけど……李世先輩はすごく上手に私の言いたいことを汲み取ってくれるの。江真くんも、先輩のその部分を褒めてたし」


「口に出さずとも伝わる。そんな感じですか?」


「うんっ、まさにそんな感じかな。まるで、私の考えていることが分かるのかなって錯覚するくらいに」






古瀬くんも、なんだかんだ人の話を聞くのが上手そうだなあ。


私が感心している一方で、古瀬くんはご機嫌な様子でぐいぐいと質問を続ける。






「口に出さずとも伝わったと蓮井さんが感じる時、菊里先輩はなにか特別なことをしていませんか?」


「うーん、してないと思う。強いて言うなら、先輩と話しているとき、ずっと目が合っているわけじゃないから、その分、色々なところを見ているのかも」





あのキレイな瞳とバッチリ目が合うとそれだけで緊張しちゃうから、逆にありがたいけど。




「……なるほど。とても参考になりました」

「ううん。私こそ、なんだか頻繁に話を聞いてくれて、ありがとう」






自然教室直後は、急にからんでくるようになった古瀬くんに、正直戸惑いもあったけど……。


梓ちゃん以外の第三者の目線から色々話を聞いてもらえて、なんだかんだ助かっていたように思う。






「……ふっ、相変わらずお人よしだね」






ふいに、無表情なことの多い古瀬くんがクスリと笑った。

体が揺れた拍子に、わずかに前髪が動く。



一瞬のぞいたその瞳に、見覚えがあった気がしたけど……





「それじゃあ、僕はこれで」




古瀬くんはすぐに立ち上がって、背中を向けてしまった。


うーん、気のせいだったかな……?
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