李世先輩は私のことを知り尽くしている?
それは、目を合わせた人の心の声を読み取れる、というもの。
いわゆる、テレパスや「覚」というやつだ。
目を合わせることが条件なので、四六時中他人の声が聞こえるというわけではない。
でも、目を合わせるという行為は、コミュニケーションの基本だ。
心の声を聞かないようにとずっと目を伏せていれば、家族やクラスといった集団から弾かれてしまう。
だから、聞きたくもないことを聞かなければならない状況も、どうしてもでてくる。
建前と本音の差に、愕然とすることも少なくない。
でも、心の中まで取り繕えという方が横暴だろう。
この先生だって、まさか心の声を聞かれているとは露も思っていないだろうし、むしろ被害者だ。