李世先輩は私のことを知り尽くしている?
俺は笑いがとまらないまま、状況がつかめず瞬きしている新入生に、スクールバッグを拾ってくるよう促す。
背を向けているから手元は見えないけど、地面に座りこんで、真剣に中身を確認しているようだ。
しばらくすると、明らかにほっとした表情で立ち上がる。
「どう?お弁当、無事だった?」
普通の人なら、知り得ないだろう情報。
普段の俺なら、こんなリスキーなことは絶対に口に出さないのに……。
この子の反応が見たくて、口が勝手に動いてしまった。
「は、はい、おかげさまで!」
違和感に気づかなかったのか、ニコニコして返事する。
でも、ふと新入生の表情が変わったのに気づいて、もう一度だけ、しっかりと目を合わせる。
【……私、スクールバッグに入ってるお弁当がぐちゃぐちゃになってないか心配、なんて口に出したっけ?】
【いいや、口下手な私に限って、それはない。】
【なら、ど、どうして、分かったの⁉】
ふふ、ビックリしてる。
……かわいいなあ。