李世先輩は私のことを知り尽くしている?
迷っているうちに、どんどん李世先輩との距離が縮まっていく。
ど、どうしよう……。
とうとう私は、視線を下に落としてしまう。
そんな時だった。
「あっ」
そう短くつぶやいて、誰かがこちらに駆け寄ってくる。
「陽茉ちゃん、みーっけ」
男らしいけど、ちょっぴり高いこの声は――
「李世先輩……」
私がうじうじと悩んでいる間に、李世先輩は私に気づいて、話しかけてくれた。
「陽茉ちゃん、前の時間体育だったんだね。お疲れさま」
「あ、ありがとうございます」
「お腹はすいてない?」
「ま、まだ平気ですっ」
体育に備えて、たんと朝ごはんを食べてきたもん。
「ふふ、準備がいいね」
ま、また、私の心の中を見透かされた⁉
……はっ、このままだと、また先輩のペースにのせられてしまう。
いつも驚いてばっかりだし、顔に出さないようにしてみよう。