李世先輩は私のことを知り尽くしている?
「せ、先輩は、これから体育なんですね」
「うん。俺たちは今日、50メートル走なんだ」
50メートル走……。
長距離走より、さらに苦手だ。
勝ち負けがハッキリ分かるし、たった十秒たらずの時間で、あっという間に差がついちゃうから。
「がんばってくださいっ」
「陽茉ちゃんに応援されたら、がんばれちゃうな。そうだ」
「?」
李世先輩は、さっきお話ししていた友達に問いを投げかける。
「ねえ青矢。50メートル走、うちの高校の最高記録って、今年はいくつだっけ?」
「確か、6.2秒だな」
回答を得た李世先輩は、再び私に目を向ける。
「陽茉ちゃん、俺と賭けをしない?」
「か、賭け?」