李世先輩は私のことを知り尽くしている?
李世先輩が一着でゴールすると、拍手が巻き起こった。
本当に、圧巻の走りだったもん。
私もあの場にいたら、自然と拍手していただろう。
李世先輩が先生にタイムを尋ねにいくと、興味津々な他の生徒にも向けて口を開く。
ここまでは聞こえてこなかったけど、賭けの結果は明らかだった。
先生が口を開いた直後、ひと際大きな歓声があがったから。
李世先輩はしばらく同級生の対応をした後、再び校舎の方へと体を向ける。
そして、ニッとブイサインをして見せた。
――いつもはどこか飄々としている先輩の、少し子どもっぽい笑顔。
不覚にも、ドキリとしてしまった。
先輩ってば、本当に最高記録を塗り替えちゃうなんて。
そんなに、私にお願いしたいことがあるのかな?
いや、そんなわけないか。
でも、約束は約束だから……。
きっと、この後会うことになるだろう先輩のことを思うと、ドキドキする。
一体、どんなお願いをされるんだろう?
……もし、私が賭けに勝っていたとしたら。
先輩に、なんでも一つ、お願いができたんだよね。
それはそれで、よかったかも……なんて。
先輩には、絶対言えないけど。