李世先輩は私のことを知り尽くしている?
「は、はい。オレ、橘和人って言います」
「ふうん、和人で『和くん』、ねえ……」
ぶつぶつとつぶやいて、先輩はそのまま口を閉じる。
や、やっぱり、怒ってるよね?
ただならぬ雰囲気をかもし出す李世先輩。
私も和くんも何も言えずにいると、先輩はふいに顔を上げて、ようやく笑みを浮かべる。
でも、視線は下がったままで、目が合わない。
「ああ、ごめんね。ただ、ずいぶん仲がいいみたいだなって。橘くん、同じ高校じゃないよね?」
「はい、陽茉とは高校から別々になったので」
「ひ、『陽茉』……?」
和くんの答えに、李世先輩の表情がゆがむ。
「ああ、こいつの名前、陽茉っていうんです」
「いや、もちろんそれは知ってるよ?知ってるけども、ね?」
先輩の口角が、ピクピクと動く。
「そっかあ、『和くん』に『陽茉』か。なるほどね~」
……先輩、どうしちゃったんだろう。