李世先輩は私のことを知り尽くしている?
私があっけに取られていると、和くんが口を開く。
「菊里先輩、ひょっとして、オレと陽茉が付きあってるんじゃないかって思ってます?」
え、ええええ⁉
私と和くんが⁉
「いや、別にいいんだけどね?陽茉ちゃんからそういう話を聞いたこと、なかったからさ」
「せ、先輩、違います!和くんは、ただの幼なじみですから!」
私は両手をブンブンと振り、慌てて否定する。
「お、幼なじみ?」
「そうなんです。陽茉とは、赤ん坊の頃からの付き合いなんで」
「和くんにはステキな彼女さんがいるんですから、誤解を生むようなことを言っちゃ、ダメですよ!」
こんなに人がいるんだから、彼女さんのお友達がうっかり聞いていてもおかしくない。
私が声をひそめてキョロキョロと辺りを見回していると、先輩はフッと息をはいた。
「なーんだ、そういうことか」
「そ、そういうことです!」
「そっかあ。…………はー」
「ど、どうかしましたか?」
「いや、自分がけっこう重症だったことに、気づいただけ」
フッと息をはいて笑う李世先輩。
「えっ、ど、どこかケガをしたんですか?すみません、私が声をかけたせいで……」
「ううん、違う違う。それに、あの時失敗しちゃったのは、俺がバカだっただけだから」
「そ、そうなんですね?」
李世先輩がバカだったって、どういうことなんだろう。
でも、とにかく、私のせいじゃなかったんだ。
よかったあ……。