李世先輩は私のことを知り尽くしている?


陽茉ちゃんの隣にいるアイツは、誰だ?


観客でひしめき合っているとはいえ、二人の距離は明らかに近い。




――もしかして、彼氏、なのかな。





そういえば、陽茉ちゃんはフリーかどうか、聞いていなかった。


彼氏がいるようなそぶりは全くなかったから、いないものだと勝手に思いこんでいた。



でもそれは、他校の生徒と付き合っているからだったとしたら?





……気になってしかたない。




本当のことを知りたい。



こういう時に、俺の力が役立つ――わけではない。


俺が読み取れるのは、あくまで目が合った瞬間にその人が考えていることだけ。



その人がもっている記憶や情報を取捨選択して引き出すことはできない。



だから、




――「陽茉ちゃん、そいつと付き合ってるの?」



結局、そんな下世話な質問をしなければ、知ることはできないのだ。
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