李世先輩は私のことを知り尽くしている?

俺が二人に近づくと、男は真っ先に立ち上がって、大声を出したことを謝った。




すると、陽茉ちゃんがブンブンと首を横にふる。





「や、やめて、和くん!先輩、悪いのは私なんです。和くんは、私のために――」





「和くん」という親し気な呼び方が、耳にこびりつく。





「ずっと一緒にいたその子、『和くん』っていうの?」





できるだけ冷静にたずねると、「和くん」はうなずく。





「は、はい。オレ、橘和人って言います」






……ってことは、「和くん」っていうのはあだ名なのか。


ますます、陽茉ちゃんとの関係の深さが伺える。



……ひと思いに、聞いてしまえばいい。



『もしかして、陽茉ちゃんの彼氏くん?』



とか、




『陽茉ちゃん、カッコいい彼氏がいたんだね』




――って。




そうすれば、たとえ口では取り繕っても、俺には本心を知ることができるから。
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