李世先輩は私のことを知り尽くしている?
しばらく三人で他愛もない会話をしていると、
「すみません、お手洗いに行ってきます」
陽茉ちゃんはぺこりと礼をして、スタンドを出て行った。
「あの」
陽茉ちゃんの後ろ姿を目で追っていると、橘くんが口を開いた。
陽茉ちゃんと話していた時とは違う、重みのある声音だ。
「なにかな?」
「菊里先輩って……陽茉のこと、好きなんですね?」
「……」
まさか、そんな直球な質問をされるとは。
「それは……うん、そうだね。陽茉ちゃんって、ちょっとドジでピュアで、愛らしいから」
そう言って、ちょっと笑ってみせると。
橘くんは、むっと唇をとがらせて、眉をつりあげた。
「茶化さないでください。オレにあんな鋭い視線を向けておいて……。あの時はオレが大声を出したことに対して怒ってるんだと解釈しましたけど、先輩と話しているうちに、そうじゃないってさすがに気づきますよ」
「……」
「……本当は、オレと陽茉は付き合ってる。――もしもそう言ったら、どうします?」