李世先輩は私のことを知り尽くしている?
うちの学校の「自然教室」っていうのは、簡単に言っちゃえば、臨海学校と林間学校の間をとったようなもの。
海の近くにある施設に泊まるけど、二日目には山にも登るのだ。
これだけでけっこう変わっているけど、もう一つ、他の学校とは違うところがある。
なんと、一、二年生が合同で同じ場所に行くの(修学旅行は、三年生の春)!
「縦のつながり」も作れるようにという目的があるらしく、スケジュールの中には一、二年混合のグループで活動するイベントが組みこまれている。
具体的に言うと、一日目の夜ご飯作り、二日目のオリエンテーリング(山登り)とキャンプファイヤーの三つ。
特にキャンプファイヤーなんて、暗くてドキドキする雰囲気の中、先輩と一緒に過ごせるチャンスなワケで。
意中の先輩と同じ班になろうと躍起になるクラスメイトの気持ちも、分からなくはない。
先生の話もそっちのけで話しているクラスメイトを眺めていると、梓ちゃんに軽く小突かれる。
「陽茉だって、菊里先輩と同じグループになれるか、内心ドキドキなんじゃない?」
「い、いやっ、私はそんな。一緒になれる確率なんて、0に近いんだし」
そう、口では答えつつも。
つい考えてしまう。
……もし、李世先輩と同じ班になれたら。
絶対、楽しい自然教室になるだろうなあ、って。
だ、だって、顔見知りの先輩との方が、色々とやりやすいもんね。
もうクラス内のグループは決まっていて、無事に梓ちゃんと一緒になれたから、楽しくないわけはないんだけど。
それでも……自然教室の中で、一度でも先輩のこと、見つけられたらいいな。
「失礼します」
そんなことを考えた矢先だった。