李世先輩は私のことを知り尽くしている?
戸を軽くノックした後、心地のいい声音が短く響く。
男らしい低さの中に、ひとつまみのアルト。
この声、ひょっとして……。
戸を開いて姿をあらわにしたのは――
「おお、菊里くん」
「はい。自然教室の混合グループのメンバー表をお渡ししに来ました」
私の予想通り、李世先輩だ!
多くの女子は顔を見合わせたり口元を手で覆ったりして、李世先輩の登場を喜んでいる。
「わざわざすまんな、ありがとう」
「いえ。それでは、俺はこれで」
ぺこっと軽く頭を下げて、体の向きを変える、ほんの一瞬。
無意識にじっと眺めていた私の視線を、李世先輩は確かに捉えた。
すぐに扉の方へ向いちゃったけど……先輩は、私に微笑みかけてくれた、と思う。
面識のある私にただ挨拶するような笑みではなく、なにか含みのある表情だった。
一体、どういう意味だったんだろう。
私の気のせい?