李世先輩は私のことを知り尽くしている?
昼食をはさみつつ、バスは順調に進んで、予定時間よりも早く目的地に到着した。
お世話になる施設の人に挨拶をし、泊まる部屋に荷物を置いた後は、自由時間だ。
とはいっても、部屋で休むか、砂浜で遊ぶか、宿泊施設内をブラつくかの三択くらいだけど。
私と梓ちゃんは、せっかく天気がいいからと、外に出ることにした。
私たちと同じ考えの生徒は多かったようで、貝殻を拾ったり、砂浜を走り回ったり、軽く海に入ってはしゃいだりと、にぎわっていた。
「陽茉、さっそく撮ってみたら?」
「うん、そうだね!」
私はミニショルダーバッグからデジタルカメラを取り出して、電源を入れる。
みんなが思い思いに楽しむ様子を、パシャリとフレームに収めてみた。
映りを確認していると、梓ちゃんも画面をのぞきこむ。
「お、キレイに撮れてる!けっこういいカメラだね」
「お父さんに貸してもらったの」
「へえ、陽茉のお父さんはどんな写真を撮ってるのかしら。風景とか、家族とか?」
確かに。
私も気になって、さっき撮影した写真から、過去の写真へとさかのぼってみると。
「これは……オムライス?」
とろとろふわふわの卵が具たくさんのケチャップライスをおおう、巨大サイズのオムライスがドンと映し出される。
もう一つ、またもう一つと写真をスライドしても、出てくるのは、ひたすらにおいしそうな食べ物ばかりで。
お仕事が飲食関係っていうワケでもないのに!
お父さんの食べ物に対するすさまじい執念に、梓ちゃんは柄にもなく、お腹をかかえて大笑いしている。
もーっ、お父さんっ!!
「くっ……ふふっ……」
……なんだか、梓ちゃん以外の笑い声も聞こえるような。
さっと振り返ると、梓ちゃんに負けず劣らずな勢いで、李世先輩が笑っていた。