李世先輩は私のことを知り尽くしている?
なんで梓ちゃんは声を潜めたんだろうと思ったら、いつの間にか周りに注目されていたみたい。
「ご、ごめん、ずっとつかんじゃって。嫌だったよね」
「い、いえ。助けてくださって、ありがとうございます」
確かに、ビックリはしたけど。
抱き寄せられたことは……全然、嫌じゃなかった。
周りの視線を集めちゃったのは、居心地が悪いけど……。
未だにちょっとした注目を浴びる中、ひと際強い視線を感じた。
私を――いや、私たちをにらんでいたのは……つぼみちゃんだった。
目が合うと、くるりときびすを返して人混みにまぎれこんでしまい、目で追うことはできなかった。