李世先輩は私のことを知り尽くしている?
「おまたせしましたー!」
「ふう、思ったより多いな」
横目で古瀬くんを見ているうちに、梓ちゃんと遠見先輩が材料を持ってきてくれた。
じゃがいもににんじん、たまねぎ、お肉にカレールー(ごはんは施設の人が炊いてくれている)。
調理実習の延長みたいなものだから、中身は至ってシンプル。
でも、食べ盛りの高校生5~6人分となると、一つ一つの材料の量がけっこうある。
料理の得意な梓ちゃんや遠見先輩を中心に、みんなで分担してテキパキと作っていく。
メニューがカレーだと知らなかった古瀬くんがちょっと心配だったけど、にんじんをあっという間に切ったし、形もすごくキレイ。
一方で私は、たまねぎに苦戦して涙が出るし、形も不格好になってしまった。
でも、そんな私の隣では、李世先輩がいつまでもじゃがいもの皮むきをしていて。
ようやく皮がむけたと思えば、めちゃくちゃな形に切り始めて、つい笑ってしまった。
さっきの、「料理の腕はからっきし」という言葉は、本当だったみたい。
大抵のことはカンペキに成し遂げてしまう李世先輩の、ちょっとした弱点。
形を見られたくなくて、早く鍋に放りこんでしまおうとする先輩は、微笑ましいし、かわいらしい。
李世先輩の新たな一面が見られて、うれしい。