李世先輩は私のことを知り尽くしている?
「ごめん、ちょっとだけ、席を外すね」
私は勇気を振り絞って、つぼみちゃんたちの班に近づいた。
「つ、つぼみちゃん」
顔を上げたつぼみちゃんの目が、大きく開かれる。
そしてすぐに視線を逸らした。
「あのね、私たちの班、作り終わったんだ。だ、だから、私も手伝うよ」
「……いい」
「じゃ、じゃあ、手順だけでも。安心して!私、梓ちゃん――料理上手な友達が作るとこ、ちゃんと見て」「いいって言ってるでしょ!!」
材料の一つをつかもうと伸ばした私の手を、つぼみちゃんは思い切り払った。
痛みよりも音の方が強くて、一瞬、しいんと周りが静まり返る。
「陽茉⁉」
「陽茉ちゃん⁉」
音に驚いた梓ちゃんと李世先輩が、こちらに駆け寄る。
「わ、私は平気だよ」
心配してくれる二人にそう言ってから、恐る恐るつぼみちゃんに向き直る。
つぼみちゃんの表情は……中学の時には決して見たことのないものだった。
隠しきれない怒りの感情が、ひしひしと伝わってくる。
つぼみちゃんは私たちを一べつして、背を向ける。
「もう話しかけてこないで」
「……ご、ごめんね」
あんな腹の底から怒っているような顔をされたら……もう耐えられなかった。
私も逃げるようにつぼみちゃんから離れる。
――……どうしてこうなっちゃったんだろう。