李世先輩は私のことを知り尽くしている?
優しくて強引な先輩
7グループの席に戻っても、私はうつむいていた。
カレーのスパイシーな香りが鼻孔をくすぐるのに、食欲がわいてこない。
私の食い意地も、こんな状況ではさすがに空気を読むみたいだ。
空気を読めていないのは、私自身か。
「……ちょっと、お手洗いに行ってきますね」
私は下を向いたまま立ち上がった。
私のせいで、グループの雰囲気を悪くしてしまっている。
せっかく、おいしいカレーが作れたのに。
最悪カレーが食べられないとしても、しばらくどこかに隠れていよう。
「あ、俺も行きたい」
そう思っていたのに、まさかの李世先輩もついてきて。
正直困りながら歩いていると、李世先輩はおもむろに口を開いた。
「トイレ行くっていうの、ウソでしょ。俺たちに気を遣って、席を離れようとしたんだよね?」
「……わかってるなら、どうしてついてきたんですか」
李世先輩にこんなトゲトゲしたことを言ったのは、初めてだ。
自分の心まで、重く苦しくなる。
「陽茉ちゃんのこと、放っておけないから」
それなのに、李世先輩の言葉はどこまでも真っすぐで。
私は思わず足を止めて、李世先輩を見つめてしまった。
――真剣な表情の中ににじむ優しさ。
気づけば、私はぽろぽろと涙をこぼしていた。