李世先輩は私のことを知り尽くしている?
「あの子と、なにがあったの?」
そっとハンカチを差し出してくれる李世先輩。
私はそれを受け取り、涙をぬぐうと、呼吸を整えてから話し始めた。
つぼみちゃんは中学時代一番仲の良かった友達なのに、同じ高校にあがって気づくと態度が冷たくなっていたこと。
その原因に、全く心当たりがないことを。
「そっか……。じゃあ、さっきは仲直りしたくて声をかけたのかな?」
「はい。でも、あんなに怒るなんて……。もう、友達でいるのは無理ですよね……」
つぼみちゃんは、私のことが嫌いになったんだ。
それか、中学時代から嫌いだったけど、言い出せなかったのかもしれない。
それで、進学を機に、縁を切ろうとしたとか……。
もしそうなら、これ以上関わらない方が、つぼみちゃんのためだよね。
また涙がにじんできそうになっていると、先輩はふっと穏やかな、優しい笑みを浮かべて言った。
「俺は、そんなことないと思うよ」
「えっ……あんなに怒ってたのに、ですか?」
「えーと、確かに怒ってはいるんだけど……いや、これ以上は俺が言っちゃいけないな」
「?」
「とにかく、もう一度だけ、つぼみちゃんと向き合ってみなよ。きっと、仲直りできるから」
「は、はい……」