李世先輩は私のことを知り尽くしている?
次に異変を感じたのは、自然教室一日目の昼。
浜辺で陽茉ちゃんとツーショットを撮れたり、ちょっとしたハプニングによって抱き寄せてしまったりして、必死にいつも通りに振舞っていた時だった。
俺は見たことのない一人の女子生徒が、陽茉ちゃんか葉山ちゃんのことを強くにらみつけていたのだ。
チラリと陽茉ちゃんの様子を伺うと、その子の方を見ながら、顔を強張らせていて。
どうやら、あの女の子と何かあって、陽茉ちゃんは悩んでいるのだろうと察しがついた。
でも陽茉ちゃんは、そのことを俺にも、葉山ちゃんにも相談しない。
陽茉ちゃんは、もっと人を頼ればいいのに……。
決定的な出来事が起きたのは、夕食づくりのことだ。
7班のカレー作りが終わると、陽茉ちゃんは意を決したように、あの女の子がいる班に向かって言った。
「つ、つぼみちゃん」
あの子の名前は、つぼみちゃんと言うらしい。
つぼみちゃんは何も答えずに、すぐに視線を逸らす。
「あのね、私たちの班、作り終わったんだ。だ、だから、私も手伝うよ」
「……いい」
ぶっきらぼうな態度をとり続けるつぼみちゃんに、陽茉ちゃんは根気よく話し続ける。
「じゃ、じゃあ、手順だけでも。安心して!私、梓ちゃん――料理上手な友達が作るとこ、ちゃんと見て」「いいって言ってるでしょ!!」
材料の一つをつかもうと伸ばした陽茉ちゃんの手を、つぼみちゃんは思い切り払った。