夏空、蝶々結び。
・・・
「はぁ……」
疲れた。
結局、休み明けの初日から残業だ。
でもこれで、明日が少しは楽になる。
今はきつくても、すぐそこの未来の自分の為なのだ。
自分で自分を褒めてあげたい――そんな達成感に浸りかけた時――。
「ばっかじゃないの」
気分を台無しにする声が、頭をガツンと殴りつけた。
「まだ病み上がりとも言えないくせに、一人でそんなに仕事抱え込んで。今の時代、残業が喜ばれないことも多いだろ。かなえちゃんとこがどうだか知らないけど、ちゃんと残業許可下りてんの? 」
文句を言いたくて口を開いたのに、声はちっとも出てくれなかった。
つまりは図星で――ゴンの言うことは正しい。
入退室はカードで管理されているから、サービス残業はあり得ない。
残業代が発生することを会社が嫌がるのは、この部署では私の他に誰も残っていないのを見れば一目瞭然だった。
「仕方ないじゃない。休んでた分、挽回しなきゃ」
見守っていたって、仕事は減らない。
自分の仕事は自分でやらなくちゃ――……。
「誰の仕事」
「え……」
心の中を読んだように、ゴンが言った。
「だから、それ誰の仕事だって。かなえちゃんのじゃないだろ」